【トピック】プロ野球の怪我から考える「ダブルベース」──ソフトボール発、安全の一歩を野球にも

5月6日、プロ野球・読売ジャイアンツの岡本和真選手が一塁ベース上での接触プレーにより、左肘を負傷するアクシデントがありました。ファーストでの守備中、走者との接触で起きたこの怪我は、今後のプレーにも影響を与えかねない深刻なもので、ファンや関係者に衝撃が走っています。
このニュースを受け、SNSやメディアでは「ダブルベース(セーフティベース)」の導入を求める声が広がっています。これはまさに、私たちソフトボールの現場では以前から大切にしてきた安全対策です。
■ ダブルベースってなに?
ソフトボールをプレーされたことのある方にはおなじみかもしれませんが、ダブルベースとは、一塁ベースを「白(守備用)」と「オレンジ(走者用)」の2つに分けて設置するもの。守備側と走者の動線を物理的に分けることで、衝突のリスクを大幅に減らす目的があります。
ソフトボールでは、ダブルベースは1987年から導入され、効果を上げています 。経験、性別を問わずさまざまな方が一緒にプレーするため、このダブルベースは安全確保の観点から欠かせない存在となっています。

ソフトボールにおけるダブルベースの利点
ソフトボールは、多様な性別や年齢、経験を持つ選手が参加するスポーツです。そのため、安全性の確保は最優先事項となります。ダブルベースの導入により、以下のような利点が得られます。
- 接触事故の防止:守備側と走者が異なるベースを使用することで、接触のリスクを大幅に減少させます。
- ルールの明確化:打者走者はオレンジベース、守備者は白色ベースと明確に分けることで、プレーの混乱を防ぎます。
- 初心者への配慮:ルールが明確であるため、初心者でも安心してプレーに参加できます。
これらの利点により、ソフトボールではダブルベースの導入が積極的に行われています。

■ なぜ、野球にもダブルベースが必要なのか?
野球ではソフトボールに比べてベース間の距離が長く、走力やスピードも高いため、「ぶつかることは少ない」と考えられてきた背景があります。しかし、今回のように塁上でのクロスプレーによる接触は、決して珍しいことではありません。
実際に、アメリカのマイナーリーグではベースサイズの拡大や位置調整の試験導入が進められていますし、日本でも2024年秋に行われたフェニックス・リーグ(若手選手中心の教育リーグ)で、ダブルベースが一部試験的に採用されました。
ソフトボールは安全性を重視しながら進化してきたスポーツです。だからこそ、そのノウハウを活かし、野球にも「安全の文化」を広げていくことができるのではないでしょうか。

■ ソフトボールの現場から
ソフトボールでは、プレーの技術向上だけでなく、「みんなが安心してグラウンドに立てる環境づくり」を大切にしています。ダブルベースの導入もその一つ。安全が確保されてこそ、思いきったプレーや本気の勝負が生まれます。
プロ野球という大舞台で起きたアクシデントを機に、あらためてスポーツの“安全設計”について考える機会にしたい――
ソフトボールが先んじて築いてきた安心の知恵が、野球にも広がっていくことを心から願っています。
(虹色ソフトボール)

