【インタビュー】33年かけた想い!多治見西高校 上松監督インタビュー 選抜初優勝 高校女子ソフトボール

2024年3月に静岡県富士宮市で開催された「第42回全国高等学校女子ソフトボール選抜大会」で多治見西高校が初優勝しました。多治見西高校は強豪校であるにも関わらず優勝経験がなく、今回春夏合わせて初めての優勝となりました。この度平成3年から監督を務めている上松美香子監督にお話を伺いしました。

虹色:先生は何年位監督をされているんですか?

上松:33年です。熊本出身で熊本の国府高校から日体大に行き、そこからユニチカ垂井(岐阜県)で一年プレーし、平成元年から多治見西高校へ来ました。2年間コーチで平成3年から監督になりました。

虹色:卒業生の実業団選手に上松先生の印象を聞くと怖いと言われてますが

上松:(笑)だいぶ怒ってきましたからね。

虹色:初優勝が意外だなと思いましたが

上松:みんなに言われます。2位や3位は何回かやってますが優勝がなかなか獲れなくて本当に春夏で初めて優勝させてもらいました。

虹色:優勝の瞬間はどんなお気持ちでしたか?

上松瞬間は「あれ、なんか勝っちゃったな」という感じでした。あれよあれよという間に7回が終わって集合になったので、「あら!」という感じでしたね。以前、優勝経験の多い須磨ノ浦高校の池田先生に「こういう時はどんな気持ちなの?」と聞いたことがあるのですが「なんか勝った実感がないのよね」と言われていたんです。「あ、こういうことなんだな」と初めてわかりました。あとからじわじわきますね。みなさんに「おめでとう!」って言ってもらったり、祝賀会をやってもらったりしながら「優勝したんやな~」という実感が湧いてきました。「やっと日本一になったんだな、33年か。やっと夢が叶ったな」って思います。

虹色:これまで沢山の選手を送り出しましたよね

上松:そうですね。(コーチ)の小沢(元戸田中央)も卒業生だし、今寮母やっている子も卒業生(元大鵬薬品)、もう一人理学療法士になった子も毎週木曜日に来て選手のケアをしてくれていますしね。いろんなことがいい方向に重なって今回の優勝があると思います。寮がなかったらそして卒業生が寮母をしてくれていなかったら今のメンバーも来てくれていなかったかもしれないとも思いますしね。今の寮は5年前に1軒家を買って寮にしたんです。

虹色:1軒家を購入して寮にしたんですか!それまではどうしていたのですか?

上松:学校は寮までは完備してくれないのでね。それまでは地域の卒業生の親御さんがやっている食堂や自営の居酒屋さんやお寿司屋さんの2階に住まわせてもらって食事の面倒も見てもらっていました。それが20年くらい続いていました。始めは少なくて2~3人だったのが、どんどん増えてきたので他でもお願いしなくてはならなくなり、3軒位に分かれて住んでいたこともあります。

虹色:ということは昔は地元の子が多かったということでしょうか?

上松:はい、ほとんど(自宅から)通いでした。初めてインターハイに出場した時2年連続準優勝したのですが、その時は本当に地元の子ばかりでした。それが段々と岐阜県内でも通えない子が入ってきて、卒業生の親御さんが面倒見てくれたのが始まり、それが平成9年でした。でも最近は岐阜県内でソフトボールを続ける子がいなくなってきて毎年4人位しか入ってこなくなったんです。なのでほとんどが県外。ただ愛知県は近いので通っている子もいます。

虹色:それでも他の強豪校に比べたら比較的地元が多いのではないでしょうか?

上松:そうですね。大阪・京都が5人いますが、それ以外は岐阜・愛知ですからね。なるべく地元の子を大切にしたいと思っています。上手い下手ではなく、中には初心者の子もいますしね。ソフトボール人口が減っている中今32人いますのでありがたいですね。

虹色:先ほどお聞きした話によるとマネージャーの方はソフトボール経験がないとか

上松:そうなんです。中学ではソフトテニスをやっていたらしいのですが昨年11月にいきなり入ってきました。何年かに一度たまにいるんです。基本マネージャーの募集はしていないのですが、マネージャーがいる時は大体勝ってますね。彼女(渡辺マネージャー)は休まないし朝はちゃんと来るし、「えらいでしょう?(しんどい)」って聞いたら「えらいけど、やりがいがあります」って言うんですよ。かなりしっかりしてて柔軟性がありそして全く違う目線から見れるので部員も助かっていると思います。彼女の存在はとても大きいと思いますし、私達にとっても大きいです。

虹色:(エースの)知野見さんが今日はいらっしゃらないようですが、大活躍でしたね。

上松:知野見は本当によく投げました。よく成長したなと思います。ピンチでも動揺しないで堂々と投げられるようになったし、ここまで成長するとは思いませんでしたね。バッティングもいいですしね。

虹色:最後はいつも工藤さんが抑えるんですか?

上松:そうですね。今回も最後捕まりはじめてきたので、替えました。連投でしたしね。

虹色:1番バッターの渡辺キャプテンはよく打ちましたね。

上松:あの子あってのうちのチームなのでね。そして2番の俊足の別府、この1・2番が機能してたら大体いけますね。と3番の久野が決勝戦では詰まりながらもセンターへ2点タイムリーを打ちましたからね。この1・2・3番で点が取れれば大きいです。

虹色:今年は(U15代表の)長友さんの加入もあるしインターハイも狙えそうですね。

上松:そうですね。ここにもう1枚加わるので楽しみですね。1年生は7人入ります。そのうち4人は岐阜県です。

虹色:高校だと指導者としては教育的観点もあるんですか?

上松:ほとんどそうですね。勝ち負けよりも生徒指導ですかね、いろんな子がいるので。まずはちゃんと学校生活送ろうよと言っています。将来ソフトボールで食べていける人は限られているし、企業スポーツでも仕事もできないと応援されない、なのでまずは勉強しようと言っています。100点取れとは言わないけど最低限のことはやろう、そして決められたことは守らなきゃいけないし、仲間と喧嘩してもいいから泣いたり笑ったり思いやりを持ったり、そういうところや礼儀はこれから大人になって絶対に必要になってくるから、そういうことをちゃんとやった中でソフトボールを楽しんでやれたらいいかなと思います。それはずっと変わってませんね。やり方は今風にしてますけど。

虹色:大学や実業団へ送り出す時はどんなところに重点を置いていますか?

上松:まずは本人の希望を聞いて自分の行きたいところに行くということが第一なのでそこに向けて頑張りなさいという、そしてその大学もしくは企業に行きたいのならここまでできないと行けれんよ、という話しから、あとは本人次第ですね。高校に入ってくるときからJDリーグに行きたいという子もいるし、大学へ行くつもりだったのに実業団から声がかかって人生変わってしまった子もいるし、高校というのはその子の人生を決めてしまうところでもあるので、ひとりひとりきちんと向き合っていかなければいけないと思ってます。(大学や企業に進んで)環境が変わることで色々あると思いますが、本人が「ここでやりたい!」という強い気持ち、モチベーションを持たせることは大事かなと思います。
やはり、大学や企業で活躍している姿を見れるのは嬉しいです。出てる出てないに関係なくたとえ裏方でも一生懸命頑張ってる姿を見れるのはありがたいなと思います。

終わり

はじめは優勝おめでとうございます!イエーイ!というような軽いノリのつもりでオファーさせていただきましたが、思いのほかたくさんの深いお話をお聞きすることができ、大変感動しております。上松先生の心の深さや温かさに現役生も卒業生もみんなついてくるんだろうなと思いました。今回多治見西高校の初優勝を目の前で見ることができたのも何かのご縁なのかなとつくづく感じております。上松先生の33年の想いは計り知れないほどの愛でした。

多治見西高校優勝記念動画(虹ちゃん)

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