「どうして私たちは野球に参加できないの?」中米ホンジュラスの少女たちが日本へ 女子ソフトボールが切り拓く未来

「どうして私たちは、野球に参加できないの?」
中米ホンジュラスの小さな町で、ひとりの少女が投げかけたこの言葉から、女子ソフトボールの新しい物語が始まりました。
その問いをきっかけに、ホンジュラスでは史上初となる女子学生主体のソフトボールチームが誕生しました。そして今、そのチームの選手たちが日本を訪れ、技術と経験を学ぶための国際交流プロジェクトが動き出しています。
中央アメリカの国・ホンジュラスから、女子ソフトボール選手2名と女性コーチ1名が来日し、日本で約1か月間の研修を行うプログラムが2026年2月から始まりました。
拠点となるのは岡山県です。日本の企業チームや大学チーム、学校などと交流しながら競技技術や指導法を学び、その経験を母国の女子ソフトボールの発展へとつなげていくことを目的としています。
このプロジェクトを主導しているのは、岡山県倉敷市出身の下浦隼一さんです。ホンジュラスでゼロから女子ソフトボールチームを立ち上げた人物です。
虹色ソフトボールも本プロジェクトの趣旨に賛同し、帽子の協賛という形で活動を支援しています。

中央アメリカ・ホンジュラスという国
ホンジュラスは中央アメリカに位置し、北はカリブ海、南は太平洋に面している国です。人口は約1100万人で、国土は日本のおよそ3分の1の広さです。
かつては高い犯罪率で知られ、2010年代前半には世界でも最も殺人率の高い国の一つとされていました。特に女性の社会参加には多くの制約があり、「女の子は家にいるべき」という固定観念が今も一部に残っています。
こうした環境の中で、少女たちがスポーツに参加する機会は決して多くありませんでした。
しかし近年、スポーツを通じた教育や地域活動が少しずつ広がり、ホンジュラス女子ソフトボール代表チームは2025年、WBSC世界ランキングに史上初めてランクインしました。
まだ発展途上の競技ではありますが、ソフトボールは少女たちに新しい可能性を示す存在になりつつあります。

「どうして私たちは野球に参加できないの?」
このプロジェクトの原点は、一人の少女の言葉でした。
2023年7月、青年海外協力隊としてホンジュラス南部エルトリウンフォ市に派遣された下浦隼一さんは、現地で野球普及活動に取り組んでいました。
下浦さんは長崎大学で機械工学を専攻し、メーカー勤務や中学校教員を経て、JICA海外協力隊としてホンジュラスに派遣されています。
ある日、野球を教えているグラウンドで、女子学生からこう問いかけられました。
「どうして私たちは、野球に参加できないの?」
それは、少女たちが長年抱えてきた違和感と願いそのものでした。
社会の固定観念によってスポーツから遠ざけられてきた少女たち。その声に心を動かされた下浦さんは、同年12月15日、女子ソフトボールチームをゼロから立ち上げました。

6人から始まった女子ソフトボールチーム
最初のメンバーはわずか6人でした。
現在では約30名の女子選手が参加し、日々の練習に励んでいます。
チーム名は 「OSAS(オサス)」 です。
スペイン語で「ベアーズ」を意味するこの名前は、下浦さんが小学生時代に所属していたチーム名に由来しています。
このチームは、ホンジュラス史上初となる女子学生主体の女子ソフトボールチームです。
日々の練習や試合を通じて築かれるコミュニティは、少女たちにとって安心できる居場所となり、仲間と認め合いながら自尊心を育てる大切な場となっています。

日本で学ぶ1か月
今回来日するのは、次の3名です。
・クリステル・ダヤナ・ベラスケス・オチョア選手(16歳)
・グリニス・ジセル・スニガ・トーレス選手(16歳)
・フランシス・デル・ソコロ・オルドニェス・オチョアさん(女性コーチ)
日本には2026年2月17日から3月29日まで滞在し、岡山を中心に活動します。
岡山では、次のような交流が予定されています。
・IPU・環太平洋大学女子ソフトボール部との合同練習
・平林金属ソフトボール部との交流
・JSリーグ関係者との交流
・高校女子ソフトボール部との交流
・中学校での講演会や合同練習
・小学生との国際交流イベント
企業チーム、大学、高校、地域の子どもたちなど、さまざまな立場の人々と交流しながら、日本のソフトボール文化を体験していきます。
日本とホンジュラスを結ぶプロジェクト
この取り組みは、下浦さんが代表を務める
「NGOホンジュラス女子ソフトボールを応援する会」
が中心となって進められています。
渡航費については企業協力サポーターである
・平林金属株式会社
・アイルエンジニアリング株式会社
の支援によって実現しました。
2025年はホンジュラスと日本の国交樹立90周年の節目でもあり、本プロジェクトは両国を結ぶスポーツ交流としても注目されています。
ソフトボールが少女たちの未来を変える
日本で得た経験は、参加する3名だけで終わるものではありません。
帰国後、彼女たちはホンジュラスの少女たちへ学んだことを伝え、次の世代へとバトンをつないでいきます。
下浦さんが掲げる最終目標は、ホンジュラス国内で女子ソフトボールの普及モデルを広げ、2028年にU18大会を開催することです。
少女たちが夢を持ち、目標を立て、自分でも気づいていない可能性に出会える環境をつくること。
仲間と協力しながら努力を重ね、それぞれの人生の花を咲かせる未来を育てていくこと。
スポーツの力で、少女たちの未来への扉を開く——。
中米の小さな町から始まった女子ソフトボールの物語は、いま日本とつながり、新たな一歩を踏み出しています。
来日メンバー紹介
クリステル・ダヤナ・ベラスケス・オチョア選手
(16歳)
グリニス・ジセル・スニガ・トーレス選手
(16歳)
フランシス・デル・ソコロ・オルドニェス・オチョアコーチ
(女性コーチ)



