国スポからソフトボールが消える危機があった? 「女性スポーツの推進」240点中66点、その背景に見える競技人口の減少

国民スポーツ大会(国スポ)で行われるソフトボール競技。

成年男子、成年女子、少年男子、少年女子の4種別があり、毎年各都道府県・ブロックの代表が日本一を目指して戦っている。

長年ソフトボールを見ている人にとって、「国スポにソフトボールがある」ことは当たり前のように感じられるかもしれない。

しかし、その“当たり前”が揺らいでいた。

日本ソフトボール協会(JSA)の理事会議事録によると、第86回~第89回国民スポーツ大会の正式競技選定において、ソフトボールは当初、1000点満点中430点という厳しい評価を受けていた。(今年は第80回)

その後、関係者によるヒアリングなどを経て評価は498点となり、第86回~第89回大会でも正式競技として実施されることが決定した。

つまり、今回については正式競技から外れる事態は回避されたことになる。

では、なぜソフトボールはこれほど厳しい評価を受けたのだろうか。

その背景を調べていくと、現在の日本ソフトボール界が抱える課題の一つが見えてくる。

「女性スポーツの推進」は
240点中66点

国スポの実施競技選定では、単純に競技の人気や国際大会での成績だけを評価しているわけではない。

「国スポ及び競技会の活性化」「ジュニア世代の充実」「女性スポーツの推進」「スポーツ医・科学サポート」「開催・運営能力」「社会課題解決に向けた取り組み」など、さまざまな角度から中央競技団体の取り組みが評価されている。

その中でソフトボールの最終評価は498点

特に目を引くのが、「女性スポーツの推進」の評価だった。

240点満点中66点。

女子日本代表は世界トップクラスの競技力を誇り、国内にはJD.LEAGUEという女子トップリーグもある。

それだけに、一見すると意外な数字にも見える。

しかし、「女性スポーツの推進」で評価されるのは、トップ選手の競技成績だけではない。

女性競技者の強化・育成・普及、国スポを活用した普及活動、女性競技者への医・科学的サポート、女性指導者・審判員への支援、さらに女性登録競技者や女性指導者、女性審判員が増えているかなど、競技全体の仕組みが評価対象となっている。

日本ソフトボール協会の理事会議事録でも、低評価となった理由として、

・普及活動、特に若年層の女性選手の育成や参加に関する具体的な取り組みの提示が不十分
・国スポを普及戦略にどう活用するかというロードマップが書面化されていない
・審判員等における女性参加比率の具体的なデータが未整備
・ガバナンス面で他競技と比較して特筆すべき加点要素がなかった

ことが挙げられている。

そして、ここで気になるのが「女性登録競技者」の現状である。

女性カテゴリーの登録数は
4年間で約3割減

日本ソフトボール協会は、公式サイトで毎年度の「チーム・個人登録数」を公開している。

その中から、女子カテゴリーの個人登録数を合計して推移を確認した。

なお、JSAの資料では個人登録数について「重複含む延べ人数」とされている。そのため、以下の数字は国内で実際にプレーしている女性の実人数そのものではなく、JSAに登録された女性カテゴリーの延べ個人登録数として見ていただきたい。

女性カテゴリーの延べ個人登録数

年度女性カテゴリー登録数2021年度比
2021年度62,029人
2022年度58,623人-5.5%
2023年度52,896人-14.7%
2024年度48,002人-22.6%
2025年度43,304人-30.2%

※クラブ女子、実業団女子、大学女子、レディース、エルダー、エルデスト、高校女子、中学女子、小学女子の個人登録数を虹色ソフトボールで合算。

2021年度には62,029人だった女性カテゴリーの延べ登録数が、2025年度には43,304人となった。

4年間で18,725人減。
率にすると約30.2%の減少となる。

2023年度のJSA公式表では、大学女子1,959人、レディース5,633人、エルダー2,061人、エルデスト1,829人、高校女子15,860人、中学女子19,578人、小学女子4,486人などが記録されている。

2024年度になると、高校女子14,351人、中学女子16,757人、小学女子3,650人などとなり、若年層を中心にさらに減少している。

そして2025年度は、高校女子13,505人、中学女子13,214人、小学女子3,409人となった。

特に大きく減少している
中学生女子

2021年度と2025年度をカテゴリー別に比較すると、さらに特徴が見えてくる。

若年女子カテゴリーの比較

カテゴリー2021年度2025年度増減数増減率
小学生女子4,180人3,409人-771人-18.4%
中学生女子24,639人13,214人-11,425人-46.4%
高校女子19,491人13,505人-5,986人-30.7%
大学女子2,133人1,852人-281人-13.2%

最も大きく減少しているのが中学生女子だ。

2021年度の24,639人から、2025年度には13,214人。

4年間で11,425人、約46%の減少となっている。

高校女子も19,491人から13,505人へ約31%減少している。

小学生女子も4,180人から3,409人へ約18%減となった。

もちろん、この数字だけを見て「ソフトボールをする女子中学生が4年間で半分になった」と単純に結論づけることはできない。

JSAの資料は重複を含む延べ登録人数であり、登録方法の変化などについても考慮する必要がある。また、少子化、中学校部活動を取り巻く環境の変化、地域移行、チーム数の減少など、競技人口に影響する要因は複数考えられる。

しかし、少なくともJSAが公表する登録データ上で、若年女子カテゴリーが大きく減少していることは確認できる。

一方で増えている世代も

興味深いのは、すべての女子カテゴリーが同じように減少しているわけではないことだ。

カテゴリー2021年度2025年度増減率
レディース6,421人5,536人-13.8%
エルダー1,956人2,340人+19.6%
エルデスト1,681人2,056人+22.3%

エルダー、エルデストについては、むしろ登録数が増えている。

ソフトボールには、年齢を重ねても競技を続けられる「生涯スポーツ」としての大きな魅力がある。

その一方で、これから競技を支えていく若い世代の登録数が減少している。

今回の国スポ実施競技選定で「若年層の女性選手の育成や参加」に関する具体的な取り組みが不足していると指摘された背景を考える上でも、無視できない数字ではないだろうか。

世界トップクラスの
女子日本代表、その足元では

日本女子ソフトボール代表は、世界トップクラスの実力を持つ。

北京2008、東京2020ではオリンピック金メダルを獲得し、2028年ロサンゼルスオリンピックではソフトボールが再び実施される。

国内ではJD.LEAGUEが行われ、多くのトップ選手が活躍している。

華やかなトップカテゴリーだけを見れば、日本の女子ソフトボールは非常に充実しているように見える。

しかし、「世界で勝つこと」と「国内で競技を続ける女性を増やすこと」は同じではない。

今回の国スポの評価で問われたのは、まさにその部分だったのではないだろうか。

小学生がソフトボールに出会う。

中学生になってもプレーできる場所がある。

高校、大学、社会人へと競技を続けられる。

そして現役を終えた後も、指導者や審判員など、さまざまな形でソフトボールに関わり続けることができる。

そうした環境を競技団体としてどのように作り、どのような目標を掲げ、その成果を数字として検証していくのか。

「女性スポーツの推進」240点中66点という数字は、女子ソフトボールの競技力を評価した数字ではない。

むしろ、世界トップクラスの競技力を持つ女子ソフトボールを、この先どう広げ、どう次の世代につないでいくのか。

そこを改めて問われた結果と考えるべきなのかもしれない。

今回、第86回~第89回国民スポーツ大会でも、ソフトボールは正式競技として存続することが決まった。

ひとまず危機は回避された。

しかし、若年層を中心とした登録数の減少という課題まで解決したわけではない。

国スポの正式競技として残ったことをゴールとするのではなく、今回示された評価を、これからのソフトボール界を考えるきっかけにできるか。

競技の未来にとって、本当に重要なのはここからなのかもしれない。


【データ出典】

公益財団法人日本ソフトボール協会「JSA 概要・事業」
2021年度~2025年度の「チーム・個人登録数」が年度別に公開されています。

・2021年度 チーム・個人登録数
https://www.softball.or.jp/jsa/outline/pdf/2021_registered_team.pdf

・2022年度 チーム・個人登録数
https://www.softball.or.jp/jsa/outline/pdf/2022_registered_team.pdf

・2023年度 チーム・個人登録数
https://www.softball.or.jp/jsa/outline/pdf/2023_registered_team.pdf

・2024年度 チーム・個人登録数
https://www.softball.or.jp/jsa/outline/pdf/2024_registered_team.pdf

・2025年度 チーム・個人登録数
https://www.softball.or.jp/jsa/outline/pdf/2025_registered_team.pdf

※各年度の「個人登録数」を使用。JSA資料では「重複含む延べ人数」とされています。女性カテゴリー合計および増減率は、JSA公表値をもとに虹色ソフトボールで集計・算出。