交流戦が映し出した投手陣の現在地―下位チームの意地―2026JDリーグ第9節投手総括 女子ソフトボール

下位チームの意地、
日本人投手に託されたチャンス、
そして勝利を呼び込むリリーフの存在。
交流戦だからこそ見えた
投手陣の価値を振り返る。

Sam Show投手と浅野莉胡捕手(大垣ミナモ) ©️JD.LEAGUE

交流戦だからこそ見えた
投手起用の難しさと可能性

普段対戦する機会も少なく、実際に試合を見る機会も少ない相手と戦う、年に1度の交流戦。
若手や日本人投手を起用するチャンスである一方、大きなリスクを伴い、それ相応の覚悟が必要になることを再確認した今節だったのではないだろうか。

上位に食って掛かる下位チームの底力性

14日日曜に行われたSGHvs太陽誘電戦。
SGHはこれまで好調キャスリン・サンダーコックが次々と勝ち星を重ね、8節終了時には東西合わせて防御率は0.83の堂々トップ。勝利数も8とカーリー・フーバーに続き2位。

この試合はキャスリンではなく永井柚衣に託したSGHベンチ。4回まで登板するも3本の長打を浴び3失点、強打のSG打線は相手投手曽根はん奈から1点しか奪えず、チームは黒星を喫した。

曽根はん奈投手(太陽誘電)©️ JD.LEAGUE

同じく日曜日、北九州ラウンドではここまで14勝のトヨタと4勝のミナモの対戦。ミナモの先発、サム・ショウは前日に5回108球を投げており、逆転勝利の立役者になっている。

対するトヨタは今節まだ勝ち星がない丸本真菜を先発起用。経験を積ませ、成長してもらいたいという首脳陣の思いとは裏腹に、初回にツーランホームランを打たれ先制を許すと、続く2回も立て直すことができず0死2,3塁でマウンドを2番手成瀬結衣に渡すこととなる。救援したい成瀬ではあったが、後続に連打され、この回も3点を失うこととなる。

ミナモはサム・ショウが気迫の投球で完投し、東地区8位のミナモが北九州で2連勝となった。

打撃でも活躍 逆転ツーランを放つSam Show選手(大垣ミナモ) ©️JD.LEAGUE

巡ってきたチャンスを掴む難しさ
日本人投手が向き合う見えないプレッシャー

外国人がいるチームでは、メンタル面含め、日本人投手のコンディショニングが難しい。やっと巡ってきたチャンスを絶対に掴もうと、いつも以上に力が入ったり、いろいろなことを意識しすぎてしまうことも多い。登板する機会がそもそも少ないため、マウンド上でのイメージがしにくいことも相まって、マウンドに上がれば緊張してストライクが入らない、なんてこともよくあることだ。いつ巡ってくるかわからないチャンスに向けて調整を続ける難しさは、誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか。

控え投手が支えた完封リレー
鹿野愛音が示した“準備する力”

リリーフの難しさについては過去に触れたが、今節はこんな場面も見られた。タカギvsNEC戦。タカギの先発は上村紗輝。持ち味であるリズム良く相手打線を打ち取るピッチングで好調NEC打線を4回まで1安打無失点に抑えていた。5回、味方のエラーが続き1死2,3塁の場面で急遽足がつったか、アクシデントにより降板を余儀なくされた。

ここでマウンドを託されたのが鹿野愛音。2死満塁のピンチを0で凌ぐと、6,7回にもピンチを迎えながら最終的には無失点でつなぎ、完封リレーを達成した。もし鹿野愛音が全く投球練習をしていなければ、この完封リレーは実現しなかったように思える。控えの投手は試合の流れを読みながら、緊急登板に備えなければならない。

鹿野愛音投手(タカギ北九州) ©️JD.LEAGUE

日本人投手が担う”抑え”
勝利の最後を託される存在へ

遠藤杏樺が託された大仕事
強打者ポーターを打ち取り試合を締める

土曜日に行われたデンソーvsSGH戦。アラナ・バウターキャスリン・サンダーコックの投げ合いは6回を終えて3-2でデンソーが1点リード。7表SGHの攻撃、先頭バッターの9番中村優花をヒットで出塁させると、デンソーベンチはここで遠藤杏樺を投入。続く1番木下華恋にもヒットと打たれ0死1,3塁。2死満塁とすると打席にはステーシー・ポーター。

この場面をファーストフライにきって取った。外国人に代わって日本人投手が抑えを任されるケースは貴重であり、日本のソフトボール界にとって大きな意味を持つと感じる。これからは、日本のソフトボール界から外国人投手に肩を並べる実力を持つ投手がどんどん出てきてほしい。

勝利のハグ!Alana Vawter投手と遠藤杏樺投手(デンソー) ©️JD.LEAGUE

交流戦で見えた日本人投手の未来
― 勝敗以上に価値のある経験 ―

交流戦は順位を争う場であると同時に、新たな戦力を育てる場でもある。

巡ってきたチャンスを掴んだ選手もいれば、悔しい結果に終わった選手もいた。しかし、その経験こそが今後の成長につながる。

第9節は、日本人投手たちがそれぞれの立場で挑戦し、そして成長への一歩を刻んだ節だったのではないだろうか。

第9節終了時 投手成績

第9節終了時(規定投球回数40)
試合数:20試合

防御率 ベスト10
1位 Kathryn Sandercock(SGH) 0.99
2位 後藤希友(戸田中央) 1.01
3位 Alana Vawter(デンソー) 1.34
4位 Carley Hoover(ビックカメラ) 1.41
5位 Georgina Corrick(日本精工) 1.63
6位 Jailyn Ford(トヨタ) 1.64
7位 Ally Carda(ホンダ) 1.74
8位 Madison Penta(日本精工) 1.89
9位 Megan Faraimo(トヨタ) 2.15
10位 山下千世(豊田自動織機) 2.25

勝利数 ベスト10
1位 Carley Hoover(ビックカメラ) 12勝
2位 Kathryn Sandercock(SGH) 8勝
2位 Alana Vawter(デンソー) 8勝
4位 後藤希友(戸田中央) 7勝
4位 Jailyn Ford(トヨタ) 7勝
6位 Georgina Corrick(日本精工) 6勝
6位 Lexi Kilfoyl(豊田自動織機) 6勝
6位 山下千世(豊田自動織機) 6勝
9位 三輪さくら(SHIONOGI) 5勝
9位 山本すみれ(NEC) 5勝
9位 Megan Faraimo(トヨタ) 5勝
9位 長谷川鈴夏(日立) 5勝
9位 庄司奈々(伊予銀行) 5勝
9位 新宮怜美(ホンダ) 5勝

奪三振 ベスト10
1位 Carley Hoover(ビックカメラ) 127
2位 Georgina Corrick(日本精工) 77
2位 Jailyn Ford(トヨタ) 77
4位 Madison Penta(日本精工) 76
5位 Kathryn Sandercock(SGH) 71
6位 後藤希友(戸田中央) 66
7位 Megan Faraimo(トヨタ) 65
8位 山下千世(豊田自動織機) 51
8位 長谷川鈴夏(日立) 51
10位 三輪さくら(SHIONOGI) 48
10位 坂本実桜(日立) 48

🥎注目ポイント
・フーバーが12勝・127奪三振でリーグを独走。
・サンダーコックは唯一の0点台防御率(0.99)を維持。
・後藤希友も1.01と1点台前半をキープし、サンダーコックを追走。
・日本精工はコリック、ペンタの両外国人投手が奪三振ランキング上位を占める。
・豊田自動織機は山下千世、キルフォイルの両輪で勝ち星を積み上げている。

参考)第9節試合レビュー

試合レビュー【JDリーグ2026第9節】試合結果・スコア 川崎・高岡・尼崎・北九州 女子ソフトボール

第1節 第2節 第3節 第4節 第5節 第6節 第7節 第8節 第9節 第10節 総合ページJDリーグ2026 試合詳細 試合名をタップで詳細ページへ東地区勝利 西地区勝利 GN=Game…

〇 第1節投手総括
(上野由岐子が示した開幕の格 揺らぐ絶対エースと“投手2枚時代”の幕開け)

〇第2節投手総括
(勝山美桜ノーノー達成と“若手台頭”の現在地)

〇第3節投手総括
(300奪三振・500奪三振が示す支配力 戸田中央無敗を支える“奪三振投手”の価値)

〇第4節投手総括
(JDリーグは“完投時代”の終わりへ 勝敗を左右するリリーフ陣の重要性)

〇第5節投手総括
(“任される覚悟”がチームを強くする―日本人投手たちの存在感)

“任される覚悟”がチームを強くする―日本人投手たちの存在感 2026JDリーグ第5節投手総括 女子ソフトボール

SGH戦完封勝利でMWP 山下千世選手(豊田自動織機) ©️JD.LEAGUE 豊田織機3連勝の裏側に生まれた責任感 “ダラスの穴”を埋める日本人投手陣の覚悟 7年間チームを支えてき…

〇第6節投手総括
(勝利を呼び込む投球とは何か ―第6節で改めて浮かび上がった投手の役割)

勝利を呼び込む投球とは何か ―第6節で改めて浮かび上がった投手の役割― 2026JDリーグ第6節投手総括 女子ソフトボール

ルーキー曽我部由楽の完封劇、三輪さくらの意地、山本すみれの火消し勝利を呼び込んだ投手たちの働きを振り返る 伊予銀行 MWP曽我部由楽投手(中央)  ©️JD.LEAGUE 西…

〇第7節投手総括
(勝利の裏にいる“3枚目”―優勝争いを左右する投手層の力)

勝利の裏にいる“3枚目”―優勝争いを左右する投手層の力 2026JDリーグ第7節投手総括 女子ソフトボール

成瀨結衣投手(トヨタ)©️JD.LEAGUE 敗れはしたものの戸田打線相手に堂々の完投 戸田中央は珍しくロースコアの試合となったが、しっかりと星を2つ増やした。ここで注目し…

〇第8節投手総括
(完封がチームを強くする―ベテランの存在感と“無失点”が生み出す勝利のリズム)

完封がチームを強くする―ベテランの存在感と“無失点”が生み出す勝利のリズム―2026JDリーグ第8節投手総括 女子ソフトボール

庄司奈々の円熟味あふれる投球、長谷川鈴夏・山本すみれ・アラナ・バウターの完封劇。無失点がもたらす価値を改めて考える。 庄司奈々投手(伊予銀行)©️JD.LEAGUE 昨年の…